

乳腺はもともとやわらかいものではありません。
特に日本人女性の乳房は白人女性の乳房よりも硬く、脂肪が少ないことが多いようです。また乳腺の表面そのものに凹凸があり、しこりがなくても、しこりがあるように思うのはこのためでもあります。
特に月経前は女性ホルモン(エストロゲン)の影響をうけて乳腺が強くうっ血するため、「乳房の痛みを伴うしこり」を感じることが多くなります。月経周期に伴って症状が軽快・増悪を繰り返す場合や両方の乳房に同じような症状が対称性にある場合には病気ではなく、正常の乳腺そのものであることがほとんどであり、あわてて受診される必要性は少ないと考えられます。
しこりや痛みが月経周期と関係なく感じたり、左右差がある場合にはすみやかに受診し、エコーとマンモグラフィ両方の検査を受けられることをおすすめします。

乳がん検診を受けられた方の中には、触診をうけた医師より「あなたは乳腺症ですね」と言われた方が多いのでは?
では乳腺症とは何でしょうか?乳腺症はがんになりやすいのでしょうか?
答えはいずれもNOです。ただし注意は必要です。その理由を説明します。
乳腺そのものは本来硬い組織です。その乳腺組織が女性ホルンモン(エストロゲン)の影響をうけて、うっ血し、さらにゴツゴツと硬くなります。このような場合、乳房内に小さなしこりが生まれていても、それを触ることは困難です。エコー検査では、強くうっ血した乳腺はしこりのように暗くまだらに映し出され、一方、マンモグラフィでは硬い乳腺と重なってしまい、小さなしこりを発見することは容易ではありません。また、乳腺症の一部では乳がんのように乳頭から血性分泌を起こすものもあります。
以上のようなことから乳腺症の場合には小さなしこり(腫瘍)を見つけることが難しいことが多く注意が必要です。そのため定期的な専門医による定期検診(フォローアップ)が行われることがあります。

マンモグラフィに写る石灰化はカルシウムで出来ています。石灰化というものは年を重ねるごとにカルシウムが沈着することで体のあちこちに貯まります。乳腺はミルクを作る臓器であることからもわかるように細胞の分泌物にカルシウムが豊富に含まれるため石灰化がよく見られます。石灰化の成分のカルシウムは骨の成分でもあるため骨のようにレントゲンで白く写ってきます。
このように、多くの石灰化は良性のものですが、一部に早期がんが作っている石灰化もあります。早期がんの場合乳汁を運ぶための乳管という細い管の中に石灰化が出来るので木の枯れ枝のようにY の時になっていたり先がとがったりします。反して良性の石灰化は角張ったところのない丸いものになります。
ただ、石灰化の出来はじめではどちらの場合でも形がはっきりしません。また、石灰化が悪性のものであっても、しこりを作らないことも多く、レントゲンに写っている石灰化の部分を取り出して調べるためにはマンモトーム生検という特殊な検査(レントゲンを取りながら太い針で石灰化部分を削りとる検査)が必要になります。
石灰化の形や広がり具合(分布の状態)に応じて良性や癌の頻度が異なるため、細かく分類をして、その危険性の高さに応じてその後の方針も異なります。比較的癌の危険性が低い場合は半年から1年の期間を空けてから再検査をします。再検査で形がはっきりしてきたり、石灰化が増えてきたりしていればマンモトーム生検をお勧めします。
もし、今ある石灰化が悪性のものの出来はじめだとしても浸潤をしていない早期乳がんであるため半年や一年で急激に成長することはありません。むしろ、石灰化がある程度はっきりしたものにならないと、乳房というかたまりの中からその場所を探し出すのは非常に難しいのです。
ですから、医師から期間を空けて再検査を勧められた方は是非次回の予約日には必ずお越しください。問題のない石灰化と説明された方はその石灰化が悪さをすることはありませんのでご安心ください。


のう胞
乳房にできる、しこりのうち20歳代から60歳代までの幅広い年齢で認められます。乳腺組織内で分泌液が溜まり、それらがお互いに集まって大きな液体のたまりをつくることがあります。
内容物は透明〜黄色の液体で、大きいものでは3cmほどの弾力のあるしこりとして触れることもあります。ほとんどの場合、治療の必要性はありませんが、内容物が血液であったり、複数の小さなのう胞が1ヵ所に集まっている場合などは早期がんの可能性があります。診断にはエコーと細胞診が有効です。
線維腺腫
10代から30代の方に多くみられる良性のしこりです。硬いしこりとして触れますが、表面は平滑で境界がはっきりしており、皮膚の下でよく動くのが特徴です。
超音波検査でほぼ診断がつくことが多いのですが、一度は細胞診で良性であることを確認しておかれることをおすすめします。
ほとんどの場合2cm程度までで、それ以上大きくなりませんが(=とらなくてよい)、まれに急激に大きくなるものがあります。また、のう胞や線維腺腫がある場合、乳がん検診を受けられても結局は精密検査が必要と判断されますので、あらかじめ定期検査を受けられる医療機関を決めて継続した検査を受けられることをおすすめします。
葉状腫瘍
線維腺腫に比べるとその頻度は1〜5%と稀なしこりで、検査をしても線維腺腫と見分けがつかないことが多いしこりです。葉状腫瘍の95%は良性ですが、急激に大きくなったり5%程度は悪性のことがあるため、線維腺腫と診断されても急に大きくなる場合は摘出をおすすめします。またその後の定期検査も必要です。

いくつかの発見パターンがあります。
しこりで気付かれる乳がん
乳がん検診とマンモグラフィが広まるまでは乳がんの発見動機のほとんどが「しこりで気付かれるもの」でした。この場合しこりは2〜3cmにまで発育していることがほとんどです。
乳がんは乳房間に発生し、やがては乳房間にとどまらずリンパ節や骨・肺・肝に転移を起こすことがあります。この転移が再発につながります。そしてリンパ節の程度と再発の危険性はよく比例すると言われています。2〜3cm程の大きさになって乳がんの場合リンパ節転移を起こしている危険性が20〜30%にのぼります。つまり再発を起こす危険性が20〜30%予想されるということになります。
このような場合には再発を予防するための抗がん剤治療が必要です。
しこり以外で見つかる乳がん
では、しこり以外で見つかる乳がんの場合はどうでしょうか?
乳頭からの血液分泌のみで見つかる場合
乳頭から血液まじりの分泌液がある場合、その原因として乳がんが潜んでいることがあります。このような場合、しこりがなく、エコーやマンモグラフィ、乳頭分泌液そのものの検査などを組み合わせて診断を行います。それでも術前には、はっきりと診断をつけることは難しく病巣と思われる部分を手術で摘出し、術後の組織検査(=病理検査)ではじめて診断が確定することも少なくありません。言いかえれば、がんがあっても非常に早期の段階で治療にはいることができたわけですから転移や再発の危険性も極めて低く、抗がん剤治療の必要性も、しこりが見つかった場合に比べて非常に低くなります。
検診のエコーやマンモグラフィで見つかる場合
最近5年間、近畿大学医学部外科でも、このようなケースが非常に多くなっており、これはいうまでもなく検診の普及による効果です。患者様の自覚症状なく発見される乳がんのほとんどが、マンモグラフィあるいはエコーの異常陰影であり、市町村のマンモグラフィ検診や人間ドックのエコー検査で発見されたものです。
しこりとして自覚する前の段階で見つかる乳がんの場合、またリンパ節転移や骨・肺・肝への転移を起こさないタイプの乳がん(非浸潤がん)であることも多いため、術後に抗がん剤治療が必要になることは非常に少なくなります。
また手術も縮小手術が可能になることが多いため、女性が生命と乳房を守るためエコーやマンモグラフィによる早期発見が有効な武器になります。
注意していただきたいことは、早期のがんの場合、マンモグラフィでしか発見できないものと、エコーでしか発見できないものがあるということです。















